久米靖

2021.08.16

二十四節気と昔話④ 立秋・『鬼を笑わせた爺さま』

みなさん、おはようございます!
Cast Power Next所属の久米靖です。

二十四節気と昔話、4回目は、「立秋」(8月7日~8月22日)。

「暦のうえでは秋となりました」など、ニュースでもよく聞きますね。
それでもまだ暑い日が続くため、立秋以降の暑さを「残暑」といい、「暑中見舞い」も「残暑見舞い」に変わります。

さて、日本の昔話にはよく「鬼」が登場します。
鬼は災害などの「邪気」を形として表現したもの。季節の変わり目によく出るとも言われます。

鬼の出る昔話を一つご紹介しましょう。

■『鬼を笑わせた爺さま』
むかしむかし、あるところにひとりの爺さまが住んでおった。
爺さまは、いつも面白い話をして子供たちを笑わせていたそうな。

ところが爺さまも年をとって、ある日ころっと死んでしもうた。

死んだ爺さまが極楽へ行こうとして三途(さんず)の河を渡ると、鬼供がいっぱいいて、爺様は鬼どもにつかまって閻魔(えんま)大王様の前に連れていかれた。

閻魔大王様は爺さまになんと「お前は地獄行き!」と告げた。
「な、なんで!?」
爺さまはたまげて、もう一回死にそうになった。

「これ爺、お前娑婆(しゃば)では何をしていた?」
「は、はい! おら、生きていたときは話をするのが大好きで、面白い話を作っては子供たちに語って喜ばせていたで、死んだらてっきり極楽行きだと思って楽しみにしていましただ」
「いやいや、嘘の作り話ばかりしておったろう! お前は地獄行きだ」
「そ、そんでも子供は喜んでいましたがのう。そんなこと言わねえで、どうか極楽さやってくれ」

「うーむ、よーし、それではわしのそばにいるこの鬼は、生まれてからこのかた一ぺんも笑ったことがない鬼だ。これを笑わせたら極楽にやってもよい」

「そんなら笑わん鬼のお前さん、ちいっとかがんで耳を貸してくださらんかのう」

爺さまは鬼の耳に口を近づけて、小さな声で、
「らいねん、らいねん、らいねん、なんたらかんたら、らいねん、らいねん、らいねん」と言うたと。

すると生まれていっぺんも笑ったことがない鬼が急におかしがって、身をよじって笑い転げた。

それを見た閻魔様、
「こりゃあ、たまげた! これ爺、お前あの鬼に何を言うた? なんであのように笑うとる?」

爺さまはにやっと笑って
「なあに、来年のことを言えば、鬼は笑うに決まっとる」と。

爺さまはめでたく極楽に行ったそうな。

「鬼が笑う」は、「実現性の低いことを言ってもはじまらない」「あれこれ言っても仕方がない」という意味。
「そんな未来の話をすれば、強面の鬼さえも笑う」と、からかい半分に用いる言葉です。

「来年が豊作になるかどうかを今から心配するなんて、鬼が笑うよ」というように、予想ができない先のことを話していることに対して使うのが適切なのですね。

ボクたちに置き換えれば、「芸能界で成功できるかどうかなんて全くわからないし、鬼が笑うよ」という感じでしょうか(笑)

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