久米靖

2021.08.05

フランケンシュタインの腕

みなさん、おはようございます!
Cast Power Next所属の久米靖です。

関東甲信が梅雨明けを迎えた直後の暑い日の午後、ボクは都内の病院の手術台にいました。

「麻酔はワキに注射しますからね」先生が淡々と言います。
(うわっ! 痛そう……)
「指先に電気がビリビリと走ったら、あっ! とか、うっ! とか言ってくださいね」

最初の麻酔で中指と薬指にビリビリッと電流が流れました。
肘をぶつけた時に起こるあの感覚です。
いちいち声を出そうとしなくても、自然に「ううっ!」といううめき声が漏れます。

3本の麻酔を注射したが、その度に指先に電流が走ります。
「今、どこがビリビリしました?」
「小指ですね……」
「うーん、まだかなあ……」
どうやら何かを待っているらしいのです。

引き続いて、4本目・5本目を注射。
5本目の針を射した瞬間!
「うううーっ!!」。親指に最大級の電流が流れました。
「よしよし、これで大丈夫♪」

2年ほど前に発症した肘の痛みの原因は、「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」。
いわゆる「テニス肘」です。

年齢とともに劣化して傷んできた肘の筋肉を使い過ぎた結果、肘の骨の近くで炎症が起こって痛みが生じる病気だそうです。

当初は、痛み止めのステロイド剤の注射を打ってしのいでいました。
その治療方法が限界に達したため、抜本的に治そうと手術を受けることを決心し、とうとうその日が来たのです。

麻酔は「上肢伝達麻酔」という局部麻酔。神経周辺に麻酔を注射することで、痛みを感じなくなるそうです。
5本目の注射を打ち終わり、徐々に腕が痺れてきました。

しばらくすると、左腕や手術の様子が見えないよう、顔の近くが大きな布で覆われました。もちろんちゃんと呼吸ができるよう、ポールで布を支えて空間を作ってくれています。
これはありがたかったです。痛みがなくても、さすがに自分の腕が切られるのを直視することはできません。

「では、手術を始めますね」
(ええっ!? ちょっと待って!!(@_@;))
「先生、まだ指や腕に感覚が残ってるんですけど……」
「この麻酔は完全に感覚を無くすものではありません。触られた感覚などはある程度残りますから、もし我慢できないほど痛かったら言ってください」
(……まじかっ!!)

ついに始まりました。
左肘の周りを指で押さえられ、ゆっくりですが肘の皮膚をサクッ、サクッとメスで切られるのを感じます。
もちろんそんな音が聞こえるわけではありません。あえて音にするとそんな感じなのです。

「血圧上昇! 165です!」
助手の方の少し緊張気味の声が手術室内に響きます。

「久米さん、ゆっくりと大きく呼吸をしてください」
「血圧が上がっているので、これから血圧を下げる薬を注入しますね」
すぐに反対の腕に針を刺され、薬が投与されました。

手術は確実に進んでいるようでした。
布越しに聞いてみました。
「今、何をやってるんですか?」
「傷んだ腱を取り除いてるんですよ。かなり傷んでますね……」

しばらくして左肘は終わったようで、施術ヵ所が左手首に移ります。
同じようにメスが入るのを感じますが、こちらはかなりズーンッ!と響いてきます。
(肘はもう縫い終わったのかな? それとも肘を開けたまま手首も開いてるのかな?)
ついつい余計なことを心配してしまいます。

少しでも気を紛らわせようと、別のことを考えました。
(この腕、手術が終わったら何かの手違いでターミネーターのような怪力が出せるようにならないかな・・・)

しばらくすると意識を引き戻されました。肘と手首の間に鈍くて重たい痛みが出てきたのです。
「先生、痛いんですけど……大丈夫でしょうか?」
「ああ、今骨をさわっていますからね」
(……聞かなきゃよかった(^_^;))

とてつもなく長く感じた時間が過ぎて、やっと待ちに待った瞬間が来ました。
「はい、終わりました!」

手術に要した時間は、約2時間でした。
すでに腕は包帯でぐるぐる巻き。
右手で左手を持ち上げて首から吊られた三角巾の中に入れましたが、その腕は生あたたかく、まるで眠っている猫のようでした。

夜になると麻酔が切れて、ジンジンと痛んできました。
処方してもらった痛み止めを飲んで一晩しのぎ、翌朝消毒のために再び病院へ。

包帯が解かれ、そこで初めて自分の腕をまじまじと見たのです。
(うわあっ! フランケンシュタインみたいだ!!(@_@;))

私鉄電車の地図記号のようなギザギザが、肘に約7センチ、手首に約5センチ走っています。
しかも傷口は大きく盛り上がっていました。

「なんか、盛り上がってますけど……」
「そうそう! 久米さんを盛り上げてあげようと思って・・・」
先生は両手のひらを上に向け、場を盛り上げるような動作をした。
「・・・・・・(^_^;)」
「え、あ、いやいや、傷口は治る時に引っ張る力が働くので、わざと少し盛り上げているんですよ」
「・・・へえ~」

腕は毎日少しずつ痛みが引いていき、もうすぐ抜糸の日がきます。

これからのこと、仕事・生活・運動、何より事務所での活動をこなすことに希望が見えてきました。
ギプスが取れたら、またどんどん現場に出ようと思います(^-^)/

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