土方博之
2026.02.19
心は乙女な役
「よくない予感」日記の続きとなります。「心は乙女。工事済みな漢女」役の収録が終わったので振り返りです。オーディション後にこの役をもらった時は戸惑いました、本当に女になれるのかと。でも、こんな機会はこの先も訪れないと思ってお引受けした。ここまでが前回までの要約です。
工事済みな漢女の配役を受け、台本をもらってから2日後に演出指導で、その2日後に本番収録のスピーディなスケジュールだった。二日で女にならなければ・・・と思い、そこからは頭の中は「女、女、女」だった。事務所のレッスンに通う電車の中でも演技プランを考えていた。「柔道の師範代に恋する乙女な漢女」「その師範代は、女装の趣味はあるが奥さんを愛している」「それゆえの嫉妬」「これまでの清算として師範代の女装趣味のことを奥さんに伝える決意」など、表現することは沢山あるのだが、どうやったら女になれるのかがネックだった。
限られた時間だったが懸命に練習した。心や感情が女になることを目指すのだが、女になるにも形から入るのがやりやすいと感じた。声劇なので、声のトーンを上げると気持ちも変わって来る。きっと、女装も同様なことなのだろうと思った。
そして2日目の演出指導の時が来た。これまでの成果を思いっきり出して演じてみた。だが演出の反応は、「気持ち悪い・・・」だった。「声は男のままでもセリフが女言葉になっているので、声を変える必要はない。」と言われてしまったのだ。かなりショックだった。必死で練習したのに・・・と言う気持ちと、心や感情を女にするには声も変えないとやりにくいという気持ちだった。だが演出の要請では従うしかない。声は男声のままで、心や感情を女にしなくてはならなくなった。要はハードルが上がったのだ。
その後の二日間もスケジュールは埋まっていたが、空き時間は演技プランの練り直しと声を出しての練習をした。でも次に演じるのは本番である。ここで外したら悔やみきれない。そこで、3つの演技プランを友人に聴いてもらうことにした。
・最初に取り組んだ、声も心も女になるプラン
・男声と女声を台詞により替えるプラン
・男声をベースに時折女声になるプラン
・すべて男声にするプラン・・・これは心や感情を女にすることが難しくて挫折した
友人の感想は、「声も心も女になるプラン」はやり過ぎ感があると言われた。これは事務所でもいつも言われていることだと思い却下とした。「男声と女声を台詞により替えるプラン」では、漫才をやっているようで笑ってしまうと言われた。ウケ狙いなら一番いいとのことだ。「男声をベースに時折女声になるプラン」では、中ではこれが一番しっくり来るとの意見だった。時間もなかったので、「男声をベースに時折女声になるプラン」で方向は決めて、声を出しての練習を進めることにした。
収録に向かう電車の中でも、ぶつぶつとセリフを言いながらスタジオに向かった。男声をベースに時折女声になると言っても、明確に切り替えるわけではないので、その時の感情で自然と切り替わっていかないといけない。だから、毎回演技が変わってしまう。これで大丈夫かと心配な気持ちを持ちながらスタジオ入りした。
結果は、70点くらいだったか。やはり声は男のままで、心は女になるのは難しい。だが、短期間ではあったが集中的に取り組んだので、収録が終わって安堵の気持ちが湧いてきた。収録後の写真からは、疲れた表情ながら安堵の気持ちがあふれ出ている。
土方博之
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